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手塚治虫『アドルフに告ぐ』を読んで。あらすじ&解説します。ネタバレあり

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手塚治虫氏の「アドルフに告ぐ」は、3人のアドルフに起こる数奇な運命の物語です!

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ストーリー

物語の主人公は日本の新聞記者・峠草平。彼の弟が彼に「渡したいものがあるから家に来てくれ」と伝言を残したまま殺害されてしまうところからスタートします。

彼の弟はドイツに住みながら左翼的な思想を持つ団体と付き合っていた。彼はある秘密を知っていてそのせいでナチスに殺されたらしい。そしてその秘密を握る1つの胸像を草平に渡そうとしていたのだった。だが結局、彼は殺され自分は何も受け取っていない。しかも驚くべきことに近隣の住民や目撃者、さらには警察までもが弟の死を隠蔽しだしたのだ。ここに何の意図的な企みを感じた草平は、会社に休暇届を出し、弟の死の真相を探るために動き出すのであった。

同じころ、日本の神戸に住む外交官の息子・アドルフカウフマンとユダヤ人街に住むパン屋の息子・アドルフカミルは、親の反対にあいながらも親友として付き合っていた。反対の理由は、カミルがユダヤ人だからというものだった。だがそれでもカウフマンはカミルとの付き合いをやめることはなく、またカミルもカウフマンをドイツ人だからといった目で見ることはしなかった。

ある日、カミルは家で父親が友人たちと話している内容を盗み聞きしてしまう。その内容とは「アドルフ・ヒトラーはユダヤ人だ」ということだった。彼は怖くなりその内容を書いたメモを家の近所の木に隠すことにします。その木とはカウフマンと二人でよく遊んだ木で、お互いの秘密を埋めた場所でもあったのです。

その数日後、外交官であるカウフマンの父親が日本人の芸者殺しの罪で逮捕されます。彼はその芸者に対して恨みがあったわけでは無く、彼女が持っていたある胸像を狙っていたのだが、彼女が渡さなかったために殺害したのだ。そしてその胸像とは、ドイツで峠草平の弟の家から無くなっていた作曲家・ワーグナーの胸像と同じものだった。つまり草平の弟もこの芸者も、胸像が目当てで殺されたのだった。

ワーグナーの胸像は全部で5体。その中の1つにアドルフヒトラーの出生文書が隠されている。そしてその文書は巡り巡ってついに草平の手元に来ることになるが・・・。

草平はヒトラーの出生文書をどうするのか?カミルが書いたメモ書きはカウフマンに読まれてしまうのか?

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管理人の解釈と評価

この作品は日本はおろか海外でもかなりの高評価を得ています。手塚治虫といえば「火の鳥」や「鉄人28号」などが有名ですが、海外ではこの「アドルフに告ぐ」が1番有名との声もあるほどです。

物語は、もしもの世界から想像されたストーリーです。もしもヒトラーにユダヤ人の血が流れていたら歴史はどうなっていたのか、どう変わっていたのかを手塚先生の史観で描かれています。第二次世界大戦前のドイツにはどこから出た噂かは知りませんが「ヒトラーユダヤ人説」というのは実際に存在したそうですが、おそらくは出どこが知れないデマでしょう。ただその当時の日本や世界の情勢が面白いようにわかるので、歴史の教科書としても十分勉強になると思います。

個人的には凄く好きな作品で、今までに何回読み返したかわからないほどです。ですが話が進むにつれてだんだん失速というか、ハラハラドキドキの部分が少なくなり、出生文書よりも日本のアカの問題や当時のユダヤ人へのひどい差別に焦点が集まっていきます。今でこそ内容の重みが理解できますが、幼いころの私はそんなのよりももっと文書を巡って草平が戦ったり逃げたりするシーンを求めていたような記憶がありますね。

物語の終盤は、ついにカミルとカウフマンが対決します。幼い頃は親友だった二人をここまで変えてしまったものは何だったのでしょうか?

ヒトラーでしょうか?それとも戦争でしょうか?

この作品で手塚先生は我々に何を伝えたかったのでしょうか?

私の解釈としては、戦争の無意味さ・人種差別への批判・そして平和への切なる願い。ということでしょうか。

このような作品でも、我々に戦争の悲惨さを伝えてくれる手塚先生はやはり日本史上最高の漫画家だと思います。

この本から生まれた名言

「総統はユダヤ人だ!」   「アドルフ・カウフマン」

 

管理人の評価
・読みやすい      ★★★★★
・絵の見やすさ     ★★★★☆
・感動した       ★★★★☆
・人に勧めたい     ★★★★★
・子供に読んであげたい ★★☆☆☆
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