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芥川龍之介『羅生門』について解説してみました。

投稿日:2019-01-05 更新日:

黒澤明監督の映画で有名な「羅生門」芥川龍之介の名作ですね。

最後には消えていった下人が、その後どういう人生を歩んだのか?どのような最後を遂げたのか?が気になったのは私だけではないと思います。

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ストーリー

物語の舞台は平安時代。当時の京都にあった「羅城門」に辿り着いた下人とそこに乞食のように住み着いていた老婆とのやり取り。(タイトルの「羅生門」はこの「羅城門」のことですね。)

下宿先で真面目に働いていた下人は、友人に騙されて主人の大切にしていたツボを割ってしまう。

主人から仕事を解雇され途方に暮れながら「羅城門」に辿り着いた下人は、そこで一人の老婆と出会う。

当時の京の都には、疫病が流行していて何人もの命が失われこの「羅城門」に放置されていました。

老婆はこの捨てられた死体から髪の毛をむしり取りカツラを造ろうとしていた。

驚きと怒りに満ちた下人は、この老婆の行動を咎め取り押さえるが、老婆の一言が下人の心をも変えてしまう。

「この女は生きている時にさんざん悪いことをしたのだから、やられて当たり前だ。生きていくためにしているんだからこれくらいは許されるよ。」

この老婆の言い訳を聞いて、下人の心の中の何かが変わる。

「なら、俺も生きていくためにお前に何をしても許されるよな?」

そう言って下人は老婆の着物を奪い取り、再び京都の町に消えていった・・・。

以上がこの「羅生門」の物語です。

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管理人の解釈と評価

この物語の解釈については下人の勇気に関する解釈や、貧困や世間の冷たさに対する解釈など色々ありますが、私の個人的な見解と解釈を述べていきます。

まず、この下人はとても純粋な正義感の強い若者だったということ。そして悪を許せない男だったということ。純粋で悪が許せない男であったために、自分をハメた友人や自分の生活のために髪の毛を奪っている老婆が許せなかった。

それが友人も老婆も「生きるためにやっている」という自分都合の善悪の解釈により、下人の中の善悪が入れ替わっていく描写がこの物語のポイントだと思います。

最初は老婆の行動を許せずに怒りさえ覚えた下人が、最後には老婆と同じ行動をとってしまう下人の心情の変化が、見ていてとても愉快で面白い物でした。

そしてこの作品で芥川龍之介が言いたかったことは、「貧困に対する怒りと、人間の心など簡単に変化してしまう」ということのような気がします。

下人を騙す友人も、下人をクビにする主人も、髪の毛を盗む老婆も、主人公の下人も、みな貧困ゆえにとっている行動なのです。みな生活が豊かであれば、人を騙すことも解雇することも盗みを働くこともないわけですからね。

物語自体はそれほど長くはなく、ストーリーもわかりやすくてとても読みやすい作品だと思います。

この本で生まれた名言

例えば、この死体の女は生前、蛇を魚だと偽って売っていた。嘘をついて売らなければ飢え死にしてしまうから、女のしたことを悪いとは思わない。同じように自分が死体の髪を抜きカツラを作るのも生きていくためだから、悪くはないんだよ。    「老婆」

 

管理人の評価
・読みやすい    ★★★★★
・人生に影響した  ★★★☆☆
・感動した     ★★☆☆☆
・人に勧めたい   ★★★★★
・子供に読ませたい ★☆☆☆☆
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